旅をする本












本は旅をする。





書店の棚に並んで、誰かが手に取ったその本は、そのままその誰かの本棚へ。





そこでしばらくとどまるかもしれないけれど、いつかその本が手放されるときがくる。





次の古書店の棚へ。あるいは次の読者の手へ。





読者から書店へ。書店から、また読者へ。そんなふうに、誰かに渡っていくのが紙の本の良さだ。



そんな本が好きで、紙の本を買う。たしかなモノとしての存在がある。



それは本棚に並べたときに、一目で見渡すことのできるものだ。





たくさんの本をいろんな場所から、集めてきた。



それでも自分の本棚には限りがあって、そこに留まることのできる本も多くはない。





だから、本は旅をする。次の誰かに読まれるために。





でも、本に旅をさせる手段が、以前はほとんど無かったように思う。



古書店に持ち寄る、引き取ってもらう。



他のだれかに手渡しで譲る。





古書店に売る以外には、自分の手の届く範囲以上に届けることは難しかった。





今では、インターネットで全く知らない人にも本を手渡すことができる。





本を売ることが個人でもできるようになったため、本の旅のルートが大幅に拡がって、自由に小さな単位で動くことができるようになった。





スマートフォンで、ISBNのバーコードを読み込むだけで、マーケット上に自分の本棚を作ることができる。



その本棚を見て、いいなと思った誰かが、そのなかの一冊を選んで買ってくれる。





そうして、その本はその人の本棚に加わり、また誰かが買っていく。



似たような本棚を持っている人に出会うこともある。そんな人をフォローして、ほしい本をお互いに交換するように、買っていく。





本を自分だけのものにしない、マーケット上に公開し、共有する、という考えに近いかもしれない。



シェアリングエコノミーの一つの形でもあると思う。





そんな本のフリマアプリの市場はとても面白い空間だと思っている。ブクマ!や、最近ローンチされたメルカリ・カウル、それらはまだこれから成長を続ける新しい取引形態を作ったアプリだ。





本の取引は、他のモノに比べて、ずっとその人の人柄や性格、趣味、そして好きなものが出やすいものだ。



だから、そこにいる人どうし、交流できるようになれば、もっともっと面白くなるはずだ。



ハンドメイドの作品を取引するminnneがリアルなマーケットを開催しているように、定期的に、カウルやブクマ!のユーザーによる一箱古本市みたいなものが開かれても面白い。





本が好きな人どうし、本の旅案内をするように、取引できる。それがお店を持たない一個人ができるのは、すごくワクワクする体験だ。





もっと、本に旅をさせてみたい。そうして、本の好きな人が、もっとたくさん増えるといいな。


















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