私の選ぶ2015年の本ベスト約10冊【オススメ本】

個人的な2015年の本ベスト約10冊を紹介しています。全て2015年に刊行された本になります。少しずつ追加していくかもしれません。

私の選ぶ2015年の本ベスト約10冊+α


「 #2015年の本ベスト約10冊 」・「 #2015年の短篇ベスト約10 」・「#2011年から2015年の本ベスト約10冊」 - Togetterまとめ
毎年twitter上で、本好きのあいだで共有されるタグ。海外文学からライトノベル・漫画まで、各々のオススメの本を見るのはとても楽しいです。




私は上記の本を紹介していますが、これ以外にもいい本はたくさんあった年だと思っています。少しずつ紹介します。
断片的なものの社会学
社会学者の岸政彦さんが、自身の研究の一環で行っているその人の人生の語りから社会をとらえるライフストーリー研究。

そのなかで、文脈から外れてしまうけれど、なぜか心に残ってしまう、ささいな、けっして意味があるわけでも、大きな歴史の語りのなかでは掬い取れない「断片的なもの」に注目して、それを小石のように拾い集めた一冊。

ふだんこぼれ落ちてしまうような事象から、なにかを得る、というわけではなく、ただそういったものの面白さ、おかしさ、といった不思議な魅力があることを教えてくれる。
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本屋になりたい
沖縄の市場で、小さな古本屋を営む宇田智子さんの古本屋にまつわるエッセイ。高野文子さんの挿絵もよい。

宇田さんは、大手の書店の沖縄勤務を経て、沖縄の古本屋業界に入る。
沖縄には、沖縄という場所にしかない、独自の本が多くある。それらは、大手書店の新刊本の流通ではとらえきれない島の中での流通、古本屋のあいだでの取引のなかにあることが多かった、という。

独特の文化と歴史をもって、いま日本のなかに位置づけられる沖縄のそうした独特の事情と本の魅力に憑りつかれた著者が語る本の魅力は、「本が好き」という思いよりも確かな「自分の仕事」を見つけたという強い喜びとそれを伝えようとする意志に近いのかもしれない。
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人生最後のご馳走
ライターの青山ゆみこさんが取材したのは、大阪にある淀川キリスト病院のホスピス。
ここでは緩和ケアを中心とした一人一人のニーズや暮らしに寄り添った手厚い看護を実施しており、食事に置いてもそれは徹底されている。

その人が、最後に何を食べたいと思うか、という問いには実に多くのその人の人生観や個人史のエッセンスが詰まっている。

栄養士・調理師・看護師といったケアスタッフが手掛ける素晴らしい料理とサービスを紹介するとともに、それぞれの人の思いや人生に迫る。
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べつの言葉で
アメリカの人気作家であるジュンパ・ラヒリが、作家として大成を為したのちに、イタリア語を学び、初めてイタリア語でエッセイを著す。

新たに「べつの言葉」を学びえることを著者は「湖を渡る」ことに例える。周囲の浅いところをぐるっと遠回りするのではなく、自分の力で向こう岸まで泳ぎ切る。

母語をベンガル語に持ち、アメリカの言葉で育った著者にとってイタリア語は著者にとっての第三の軸になる。その軸は著者の内面の変化にも大きく影響を与えている。
その熱意、面白さはひしひしと伝わってくる。
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レコードと暮らし
地味かもしれないが、確実に小さく、新しい音楽の芽生えを支えてきた高円寺の「円盤」の店主の語るレコードの話。

しかし、ここで語られるのは、音楽にまつわるようなレコードの話ではない。
暮らしの中で息づく人々の生活の記録としてのレコードだ。
レコードに触れ、眺め、そして聞く。その古びたにおいをかぐ。そうした体感のなかで生き生きとした生活者と、そこに関わった町の人々の姿が浮かんでくる。

だからレコードに詳しくない、音楽は知らない、人でもとても魅了される一冊になっている。
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ホフマニアーナ
ロシアの映画監督アンドレイ・タルコフスキー。
非常に魅力的な作品を残しながら、その未完の作品は多く、本著もその脚本の一つでもある。

主人公はもちろん、ドイツ作家のホフマン。彼自身も言うまでもなく魅力的な幻想作家だが、その半生を描くこの作品も散文詩のように美しく魅力的に仕上がっている。

穏やかに静かに語られる脚本から、どこか美しい映像が浮かび上がってくる、言葉の美しさを実感させられる一冊。
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コドモノセカイ
岸本佐知子氏は今年も実に精力的に翻訳活動を行っている。その中の一冊としてこちらを選んでいる。

表紙絵のコーミングのように、子どもにまつわる短編を集めた一冊。
子どもの世界の魅力をさまざまな視点でとらえ、一つのまとまりに仕上げている。

てんでばらばらで、独創的な子どもを描く作品のひとつひとつの表情を確実に捉え表現する編訳は見事というしかない。
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服従
ある意味、2015年を象徴する作品といえるかもしれない。

変化は淡々と、しかし着実に起こっていく。テロリストのそれだけでなく、長い歴史のなかでの力関係にアンバランスが生じたときに、ここで書かれたような架空の世界は、現実味を帯びた形で現れる。

ウェルベックの描く世界は、現実世界の延長線上にある。それを警鐘とみなすか予言とみなすか、あるいはただの空想と捉えるか。
読後に感じる独特の苦味は、作品それ自体よりも不安定な現実社会によってもたらされている気がする。
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かわいい夫
表紙絵だけでほんわかとした気持ちにさせられるが、当然その内容もとても「かわいい」ものになっている。
結婚・妊娠・育児・・・。twitterをはじめとしてネットではともすれば、愚痴や批判さらにはジェンダー・社会制度にも言及され、辛く苦しい現実ばかりが強調されがちになる。
しかし、ここに描かれている夫婦は、そんな社会の中でもほどよい距離感と肩肘張らない役割意識が感じられる。

不満や不安が無いわけではない。それでも、こうした安心感のある言葉が紡がれているのは、決して諦観があるわけでもなく、ただ緩やかな関係性から来るものではないだろうか。
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家族の哲学
本書は少し読みづらい。一個人の主観がありありと描かれるからだ。ただ、なにかの精神疾患を患い、それがずっと家族の暮らしに影響を与えるものだとして、その日常をここまでさらけ出して描いた作品・著書はあっただろうか。

ここで描かれる妻や子どもとのかかわりは、個人的にとても勇気づけられるものだった。
病がずっと付き合っていくものならば、家族もそれにずっと付き合っていかなければならない。
家族の形は人それぞれ、といっても、その日常はとても荒れたでこぼこ道を歩んでいる。
その荒れたでこぼこ道に悩むことが哲学なんだと改めて感じさせられた。
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ここまでがハッシュタグの内容ですが、+αで・・・


「家族」家族と一年誌
結婚・出産を経て自らも過程を築きながら音楽活動を続けるPopoyansの中村氏の編集。

まず、写真がとても良い。ざらざらした粗い、自然な撮り方が、ここで描かれる家族の生活をよく表している。
自然の中に生きるこの家族は、あまりにも「普通」の生活をしている家族とはかけ離れているように見える。でも、彼らは彼らの生活を当たり前のものとして「普通」に生活している。それは、怒ったり泣いたり笑ったりする変わらない家族だ。
さまざまなイベントと企画をしながら雑誌の存在を広めていくスタイルもまた面白く、そうした本の伝え方も好感。

http://kazoku-magazine.com/

サミュエル・ジョンソンが起こっている
リディア・ディヴィスの短い短い小説集を岸本佐知子が翻訳。

一行小説とよばれるほど、短い作品もある彼女の小説は、単なる言葉遊びではなく、確実になにか余韻のようなものを残してくれる。

一つ一つの作品は、完璧に書かれたもの、というよりもどこか未完成の余白のあるものが多い。その余白、突然の断絶が、不思議な読後感をもたらす。
そして、またすぐに読みたくなる。
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南洋と私
シンガーソングライターでもあり、最近ではノンフィクション作家としての色が目立つ寺尾紗穂さんのサイパンでの聞き書きをまとめたもの。

私たちは知らないことが多すぎる。異国に住みながら日本語が話せる老人がいること、彼らが軍歌を歌えること、様々な思いを今も抱えていること。

70年経った今も、ずっと解決されない問題なのに、直視されずに見過ごされてきたものがあるのではないか。寺尾さんは、それらに真摯に向き合ってこの本に書き留めている。
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ルワンダ・ジェノサイド 生存者の証言
ルワンダで起こったジェノサイドのことをニュースで見知っていても、それはほんの一部を切り取ったものだ。流れるような文章でとても読みやすいこの本は、その当事者が著したものだ。

国の政治の重要なポジションにいながら、ツチであることで、難民として何度も国を逃れることになる著者。
家族を皆殺しにされながらも、なお「赦しと和解」を訴える著者の言葉は重い。

「憎しみは連鎖させてはならない」。平和に慣れすぎた私たちにピンとこないかもしれないこの言葉を、もっと真摯に受け止めなければならない。
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動いている庭
自然を支配し管理するものとして西欧はとらえてきたのだ、と学んできた私たちにとって、この本の著者はまるで反対のことを唱えているように感じる。

著者は、より自然な状態、原初状態での庭のなかに、環境の秩序を見出す。その環境の動的秩序は、手入れすることがその世界を整えるはずの「庭」の概念を覆す。
その「動いている庭」に人はどのようにかかわるのか。美しい挿絵とともに、その関係性を深く掘り下げ気づかせてくれる。
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戦争と平和 ある観察
「戦争と平和」。嫌でもこのテーマについて考えなければならなかった一年だったように思う。
精神分析・心理学者である中井久夫氏が、戦争について述べているこの本の内容は決して新しいものではない。著者がずっと以前に語ったものを編集している。

にもかかわらず、その言葉はいま悩んでいる私たちにまっすぐ突き刺さる。一言一言にうなづき、また心に刻まなければ、と思わせる。

戦争をしらない世代である私たちに、残された手がかりをこうして集めてくれたこの本に感謝したい。
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あなたを選んでくれるもの
「いちばんここに似合う人」は個人的に一番好きな海外翻訳かもしれない、その著者のミランダ・ジュライのエッセイをまたも岸本佐知子が訳してくれている。

フリーペーパーの売買広告に自分の持ち物を売り出す個人を訪ね、その人の人生を見聞きする。
その人生を物語に仕立てることは小説家である彼女にとってとても簡単なことなのかもしれない。
だが、彼女はそれを意図的に避け、地味なつまらないかもしれない彼らの生活のそのままの姿を描くことに努める。

人生のなかに不必要に意味や物語を求めるより、ずっと実直でその人らしさを描きだしている。
出典 www.amazon.co.jp

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