東京を旅する
以前住んでいた街を旅するのは、少し不思議だ。
懐かしさがある一方で、久しぶりの身体感覚に新鮮さを感じることもある。
週末、東京に出かけていた。そのときのことを、時系列に綴る。
とりとめもないのは、ただ歩いているだけで、すぐにいろんな場所が見つかる街だからだ。
金曜日の深夜、夜行のバスに乗り込み、早朝にバスタ新宿に到着。
バスタの観光案内所では、&TOKYOのロゴとともに先鋭的なデザインで迎えられ、2020年を意識したものだと、すぐに理解した。
確かに、国内外の多くの旅行者は、ここを経由して東京に入るのだ。
バスで座りっぱなしだった体をほぐすために、銭湯へ。
新宿の付近には、手ごろなのが無いので、御徒町駅まで移動。
ここには、燕湯という古い銭湯がある。壁に描かれたみごとな富士山も含め、何もかもが昔ながらの作りの銭湯で、熱めのお湯にさっと浸かると、すっかり身体も目が覚める。
そのまま、しばらく散歩をする。
上野~谷根千あたりは、昔住んでいた場所の近くで、とても馴染みのある風景が続く。ところどころ、変わりながらも、記憶どおりに道は続いていて、そのまま谷中方面に歩く。途中、上野公園のまだ咲いていない桜とその下でぽつんぽつんと集まるお客さんの賑わいを横目にして。
たどり着いたのは、カヤバコーヒー。ここで、卵サンドの朝食を。
マスタードの効いた味が特徴のここの卵サンド。
昔住んでいたころから、変わらない。いまの店主が新しく店を再開するときに、創業当初の味をまねたものだ。
少し本を読んで落ち着いた後は、界隈を散歩する。
このあたりは、何も考えずにただ歩いているだけでも、面白いものが必ず目に飛び込んでくるので、あっという間に時間は過ぎる。
午後は、新宿で用事があったので、再び西側へ戻る。
根津から電車に乗ったので、代々木公園まで。そういえばフグレンがあるなぁと思って寄り道。
フグレンのコーヒーはスペシャリティらしい浅めの香りのよいもの。値段が良心的なのが素晴らしい。
新宿での用事は夕方まで続く。
そのまま新宿にて夜、人と飲む約束をしていたので、「どん底」へ。
どん底という店名とは裏腹に、とても賑やかで楽しい雰囲気の店内。長く親しまれてこそ生まれる独特の雰囲気が、好きだ。
一緒にいた友人は、最近落語に興味がある、という。
「どん底」のすぐ近くに末廣亭という寄席があり、この日も若手の落語家による深夜寄席が行われていた。いま、落語はちょっとしたブームになっているようで、開演前には行列ができていて、しかも並んでいる客の年齢層がとても若く、女性が多い。
堅苦しくない自由な雰囲気のなかで、予想以上に気軽に楽しむことができた。落語が人を安心させる作用はとてもすごい。とにかく笑って、楽しめばいいのだ。
※末廣亭だけ写真を撮れず、フリー素材をお借りしています。
(写真:フォト蔵 http://photozou.jp/photo/photo_only/1517641/181603212?size=1024#content)
宿は、池袋にある「Book and Bed TOKYO」を選んだ。
単純に、内装と選書がどうなっているのか、気になったから。
夜の隠れ家的な造作が楽しくて、秘密基地でするように読書ができる。
その雰囲気が全てだ。ファッションといえばファッションだし、毛嫌いする人もいると思う。
いろんな本の楽しみ方がある。少し変わった体験をしてみるのも、面白い。
本の選書もそれなりに各カテゴリ用意されていて、あまり人を選ばない。堅苦しくない。
とにかく大きなソファで好きなだけ本を読むのは、気持ちがいい。
居心地がいいので、朝食もここで済ませる。
バルミューダのトースターがあったので、コンビニで適当なパンを買って焼いてみた。なんでもないコンビニパンがカフェの焼き立てパンのように見える。そして、おいしい。
チェックアウトして、同じく池袋にある、南池袋公園内のカフェへ。
雨が降っていたおかげで、公園の芝生には人の姿はなく、それがカフェからの眺めを際立たせていた。
店内はブックカフェといった雰囲気で、置かれている新本、古本は購入することができる。
おいしいエッグタルトとともに再びコーヒーの時間。
とにかく落ち着ける場所を探しては、ゆっくりしている。そんな旅だ。
雨の降る中、荻窪へ。「本屋Title」を訪問。
閉店となった池袋のリブロ本店でマネージャーを務めていた辻山さんが独立して作った新刊書店だ。
とても居心地のいいこじんまりした空間、ふつうの本屋さんでいながら、そこここに素敵な本を散りばめている。本の置き方、並べ方だけで、店主のオススメが分かる、そんな本屋さんだった。その棚の作りかたが見たくて、ずっと訪れたかった場所。たくさんの本を買った。
そして、ここでもコーヒーを頂く。イイホシユミコさんのかわいい口当たりの良いカップで味わう深煎りのもの。雨の降る中、歩いてきた体がほぐれていく。
あちこちと、移動したけれど、どこに行っても東京には独特の自由さがある。
いろんな場所にいろんなエピソードと人生が落ちていて、たくさんのそれらとすれ違って、偶然出会う。
住んでいる人にとっては、少し珍しい場所も回ったかもしれないし、当たり前の日常を過ごしている場所かもしれない。
なんでもない東京巡りだけれど、圏外の人が東京を見るとこんな感じなんだな、と思ってもらえれば。
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