入り口












家に入る。大きな家には門があって、しばらく庭を歩き、玄関にたどり着く。



門と玄関は全然違う。





門は、壁とともに家を囲い、固く閉ざすことで家を守っている。



玄関の扉は、人を招き入れる。





ウチとソト。



門はそれを明確に分け、玄関はより曖昧な場所だった。



昔の家の玄関は今の家のものよりずっと広い。





新しい扉を開けて、全く違う世界に踏み入れることは、人を緊張させる。



だから、少し曖昧な温かい場所としての玄関がある。





たぶん、田舎の家のほうが、ずっと入り口は開いている。



庭に面した縁側が空いていることもあれば、玄関がおしゃべりの場になっていることもある。














たくさんの人が自分の家を持つようになって、家自体が小さくなった。





当然玄関も小さくなり、門のある家も少なくなった。



門の役割も玄関が果たすようになり、いま外に開いているような感覚の家は少ない。





マンションのエントランスは、いま門の役割を担っている。



オートロックでセキュアな環境を整え、それでいて、上質なもてなしの空間を演出している。



門に続くように、中庭が眺められるようになっていることもある。



それは外から隔てられた安心・安全な内側の世界だ。









扉を開けるときは、ドキドキする。



他人の領域に入るときでもあり、知らない世界に飛び込むときでもある。





もっと、それらが曖昧だったら、いいなと思う。





そうして、安心でいたい。いつも開いている扉は、不安や危険も呼び込んでしまうだろうか。













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