京都のこと
京都にいた
大学時代を過ごしたおかげで、京都は馴染みのある大好きな街の一つだ。特に、大学のある左京区界隈は、雑然としていて、いろんなカルチャーが混ざった変わった街だった。だから、変な人がいっぱいいて面白かった。
ボロ屋で遊ぶ
いまはすっかり新しくなったが、当時のサークル棟はボロだった。今にも壊れそうな小屋のなかに、いくつものサークルの部室があり、廊下には入りきらない備品が転がっていた。ここで授業をサボって漫画を読むこともできたし、行けばサークルの誰かに会って適当に喋ったり、なんとなくカラオケに出かけたりしていた。夜は、お酒を持ち寄って飲んでいた。
京大には、いくつも寮があったが、なぜかすべてボロだった。吉田寮が有名かもしれないが、熊野寮もコンクリ造りの割に、ボロボロで、中もやはり雑然としている。良く分からない雑誌やビラが積みあがっている。廊下にも個人の所有物なのか共有物なのか分からないものが転がっている。サークル棟とよく似ていた。僕は住んでいなかったが、友人がいたのでよく遊びに行っていた。
一般に、裕福な家庭の子どもほど、学歴が高いと言われているはずなのに、なんでみんなこんなにボロ屋が好きなんだろう?と不思議に思った。いや、裕福だからと言ってボロ屋に住めないわけじゃないし、好きかどうかも良く分からないけど。でも、なぜだかとても居心地のいい場所だったし、こういう場所が大好きだった。こんな日々が続く学生生活を送ると、だいたい少しずれた大人に成長するのだ。
鴨川で遊ぶ
今も、京都にはよく遊びに行く。大阪に住んでいて近いのもあるし、大学時代の友人が集まりやすい場所でもある。イベントがあっても1時間ほどで行ける。よく知った街ではあるが、少しずつ変わっているところもある。昔より、少し自由がきかなくなったかもしれない。あるいは僕が大人になっただけなのかもしれないが。京都でバカなことをするのは、いつも川だった。京都市内を縦に流れる鴨川。一見、きれいな水に見えるが、じつは汚いし、くさい。よくびしょ濡れになったから、分かる。
川は、子どもが遊ぶにはとてもいいところだ。お昼ごはんを、川べりでたべるのもいい。花見の季節には、ビールを片手に歩く人が増える。学生がどこかで騒いでいる。スポーツをしたり、太極拳をしたり、佇んでいたり、恋人同士手をつないでいたり。みんなそれぞれの時間を過ごしている。一人になりたくて行くこともできるし、誰かに会いたくて行くこともできる。ゆれる柳の木がとても気持ちいい。歩きながら考えることのできる場所が、京都にはたくさんあった。そして鴨川は一番お世話になった場所だ。
河原町で遊ぶ
京都で、エンターテインメントな場所は限られている。服を買う、飲みに行く、人と集まる、のはたいてい三条~四条周辺の賑わいである。こじゃれたカフェなんかは街外れにあって、そっちのほうが静かで落ち着くので好きなんだけど、人に会うには少し不便だ。「遊ぶ」ための場所をひとまとめにしてくれているのは、ある意味ラクだ。あまり考えずに人と集まることができる。
こんな街中にも、古い建物やお店が山ほど残っているのも京都の面白いところだ。祇園のほうに行けばそんなお店はいっぱいあるし、先斗町という狭い路地に入り込むと、また違う世界が開けてくる。どちらもあんまり行ったことないけど。
祇園にあるアンティークな喫茶店でバイトをしていた。大半の観光客に紛れて、いつも必ず訪れるおばあさん、同伴待ちのお客さん、着物の似合うヤクザ、また大学周辺とは全然違う世界に住む人と出会うのが面白かった。
京都の道は、碁盤の目のようになっていて、分かりやすいと言われている。でも、路地に迷い込むのが大好きな僕は、いつも迷っていた。自転車で走っていても、どの筋だかすぐに分からなくなる。祇園のあたりも意外と複雑だ。迷うのは楽しい。面白い場所はそうやって見つかったりする。
古本と京都
京都では、定期的に古本市が開かれる。大規模なもので、人も多いし本も多い。ありがたく掘り出し物を手に入れることができる。でも、普段から古本屋は多い。三条にあるブックオフすら面白い。ここに来ると、ここにしかないようなものが見つかる。京都ならではの、ブックオフだ。古本屋のためだけに、京都に行くこともある。古くからの古本屋もあれば、最近できたセレクト系?古本屋もある。取り扱う本はどこも面白いので、見つければ必ず立ち寄っている。
古本屋、普通の本屋、喫茶店、カフェ。思えば、京都の個人店はとてもすごい。これだけ大きな都市で、観光客も多いのに、小さな商店が生き延びていて、守られている。SCRAPの社長が「京都は売れないミュージシャンに優しい」と言っていたが、こうした個人店にも優しいのかもしれない。あるいは、みんなタフなのかもしれない。ぜひ、面白い文化をそのまま残していってほしい。売れないミュージシャンも、しがない書店員も。
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