大阪を歩く
大阪の観光案内
大阪に住んで、4年ほど。たまに訪れる来客に大阪を案内することも多くなった。大阪は、思った以上に観光名所と呼べる場所がなかなか見つからない。案内する場所がないのは、名古屋が有名だが、大阪もややそれに近い。よく大阪の映像として流れる心斎橋のグリコの看板、大阪城、USJ、太陽の塔。さあ、そのほかにどこに連れていこうか。
大阪の街を歩く
でも、大阪自体はとても特徴ある面白い都市だ。独特のしゃべりと気質、賑やかな商店街や安くて旨い飯屋。そうしたものはなにか名所としての象徴があるわけではない。すっかり開発されてしまったようなオフィス街にも、よく見ると古い昔からのビルが残っている。市の中心部には川が流れていて、大きな高速道路がその上を通る。オフィスの間を遠慮なくそれらの道はくぐり抜けてゆく。北の中心地・梅田から南の中心地まで難波を抜けて天王寺へと、南北に一本大きな通りが真っ直ぐ通っている。分かりやすい。市内のごく一部の街並みの話ではあるが、こうした特徴は、住んでいると気が付きにくく、外から来る人に伝えづらいものになる。
大阪のビル・建物
大阪にきて、最も心惹かれたのは、古い洋風なようで日本的なレトロなビルたちだった。今は、住宅もオフィスビルも統一された規格のなかで限られたコストと資源のなかで同様の工法で作られたものばかりが立ち並んでしまうが、昔の建物にはそうした条件を一切無視した自由さがある。それぞれが競い合って独特の表情を作り上げている。いまの建物が競い合っているのが専らコストと効率性だけになってしまったのとは対照的に、その独自性のためのお金と時間を惜しまないかのように。
レトロビルの新しい顔
そんな古いレトロビルは、いま新しい顔を見せている。昨年、中之島の中央公会堂の地下食堂がリニューアルされた。今年は中之島中央図書館内に新しくカフェがオープンしている。
本町にある芝川ビルは、カフェや眼鏡店、服飾・雑貨店など新しい店が入居している。同じく船場ビルディングも往時の面影を残したまま、デザイナー系の事務所が多く入居し、今も新しい活躍の場として使われている。むしろ、どのビルも古さを活かして新しい価値を生み出しているのが特徴的だ。そうしたことが可能な人たちが、新しい顔として非常に興味深い空間を提供してくれている。
面白いと思うものを見せる
最近、自分のところを訪れる客には、そうした場所に積極的に連れていくようにしている。初めは観光名所に連れていくべきかと思ったが、自分と趣味嗜好が近い人たちだと思うから、いまはこうした場所に案内することに躊躇はない。中之島あたりの川沿いを歩いたり、本町を抜けて心斎橋まで歩いてみたり、アメリカ村や堀江のほうまで散策したり。街の風景は面白い。ふだん歩いているオフィス街でも、人を連れて案内するとまるで景色が変わって見えることもある。ベタな観光名所を見せて、変にダサいそうしたものに恥ずかしさを感じるよりも、自分の面白いと思うものを見せるほうがいい、と思った。満足してくれているかどうかは分からないが、思わぬところで手持ちのカメラのシャッターを切る姿を見るとホッとする。みんな面白いと思うものを見つけてくれている。
街の風景を切り取るのは楽しい。
もっと、いろんな風景を見てみたい。
面白い場所を、もっと見つけたい。
人を案内しながら、僕はまだ大阪の街を全然知らないことに気がついた。
※写真は全て著者撮影。
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